『さあ太智よ、これで障害はなくなった。我に力を貸してはくれぬか?』
あの金の輝きが薬指から消えた。
俺はただの左手に戻ってしまった現実を、呆然と眺めてしまう。「ゆ、指輪が……まさか、これ、離婚成立……?」
『うむ。全精霊の承諾を得て交わされる婚姻は、全精霊が認めれば破棄が叶う。本来は各地にある精霊を奉る神殿に出向き、報告する儀式を得て叶うことだが、今は太智に自由を与えることが精霊の総意……離縁しても一度その身に宿した王族の精は残り、その力は消えん。もう大智は一王族のみに縛られぬ』
輝石の話を聞きながら、俺はジワジワと婚姻のしがらみから解放されたことを感じていく。
強引に結婚させられて、離婚するためにケイロたちを手伝っていたのに……指輪が消えた左手が軽くてたまらない。
最初は心から望んでいたこと。
でも、今は胸が激しく痛んで泣きそうになっていた。『……どうした? これが望みではなかったのか? 精霊たちから、離縁のためにケイロ王子に協力していると聞いていたのだが――』
「太智っ!!」
鳥居から名前を呼ばれて俺は振り返る。
いつになく必死な形相のケイロ。
白銀の剣を持ち、気迫に溢れた姿は凛々しく、王子の肩書きに相応しいなと思ってしまう。すぐ後ろにはアシュナムさんとソーアさんを引き連れていて、真っすぐ俺に駆けつけようとしていた。
だけどそんなケイロの前に、いつの間にか同様の剣を手にしたマイラットが立ちはだかる。
ケイロたちが足を止め、悔しげに顔をしかめる。
剣先を向けながら、マイラットは静かに告げた。「ケイロ殿下には申し訳ないが、太智様をお渡しする訳にはいきません」
迷いがない。完全に腹を括った気配をヒシヒシと感じてしまう。
それに対してケイロがカッと火が点いたように叫ぶ。
「ふざけるな、裏切り者! 俺たちの都合に太智を巻き込むな!」
「あ……っ……んむぅ……」パジャマの上から俺の体を這ってくるケイロの手も、動きは鈍い。だけど体は既に今夜抱かれてイきまくってたから、肌が敏感に愛撫を感じ取ってしまう。こんなにケイロを感じられて嬉しい。でも、もどかしい。熱くねっとりとしたキスを重ねながら、自分の瞳が潤んでいくのが分かる。早く肌に触って欲しいし、俺の中に来て欲しい。体は素直に快楽を強請りたがっていたけれど、俺の理性は、このままがっつかずにケイロを丁寧に感じたがる。だって、これが俺たちにとって正真正銘の初夜だ。どれだけ淫らに仕上がってしまった体であっても、今だけはケイロと向き合いたい。これが生涯の相手なんだって確かめるように、俺は自分からも甘いキスを何度もケイロに与え、その体に手を這わし、時折そっと抱擁する。するとキスの合間に覗くケイロの顔が、嬉しげに緩む。俺が何をやっても嬉しいって感じで、俺の全部を受け入れているのが伝わってくる。ああ、俺と同じだって分かったら、体だけじゃなく頭の中も、魂までも疼いて、俺っていう存在すべてでケイロを求めている気がした。体の疼きと火照りがさらに強くなって辛かったけれど、それでもずっとこのままでもいい――と腹を括りかけた時、「……ハッ……あぁぁ……ッ……ン……」不意にケイロの手がパジャマの裾から滑り込み、俺の肌を直に撫でる。腹から腰の付け根へとケイロの熱い手が移り、ひと撫で、ふた撫でとされる度に俺の体がピクンッと跳ねる。腰の奥が勝手に脈打って、たったこれだけで浅くイッてしまう。魔法で催淫状態にされた時以上に感じてるような……。普通の村人から瞬殺必至の超ザコに作り変えられたような気がして、ちょっとだけ心が遠い目をしてしまう。俺ばっかり快感ザコなんて不公平だ。
◇◇◇これからの話は明日にしようと、マイラットたちと別れて家に返った後。あれだけのことがあって疲れたし、さっさと寝て休んだ方がいいと思っていたのに――。「……ケイロ、なんで自分の部屋で休まないんだよ?」やっと休めるとベッドに横になったら、ケイロが無言で部屋に来て俺に被さってきた。ジッと見下ろしてくる顔が相変わらずイケメンだ。しばらく見つめ合った後、ケイロが不機嫌そうに目を細める。「お前……気づいていないのか?」「何を?」「俺たちは強制的に離婚させられて、改めて再婚したんだぞ」「そうだな。離婚して数十分後にまた結婚しちまったな。スピード再婚」「つまり今が初夜ということだ」……あっ。確かにそうだ。そうだけれども――今夜は既にヤりまくってるだろうが! 初めて俺から部屋に行って、上に乗って頑張ったのに。さらに今からヤろうっていうのか!?魔法で体力は回復してるけれど、負担は大きいんだからな?朝になったら心がヘトヘトで、体を動かすのも億劫で、授業なんてまともに受けられなくなるんだぞ?せめて次の夜にしてくれ。今日は休ませてくれよ……と心は泣き言を垂れ流してしまう。でも見つめてくるケイロの目が熱いし、真上に感じる気配や、顔の横にあるケイロの手や腕が、俺の体をざわつかせてくる。今夜は特別だもんな。一回目は俺の意思をガン無視した強制結婚で、初夜も無理やり魔法で感じやすくさせられて、手籠めにされたようなものだった。だけど二回目は、俺たちの意思で結婚したんだ。もう初夜は終えてるし、その後は散々抱かれまくって、初々しさの欠片も残っていない。それでも今夜は――。「……一回だけだぞ」「十分だ。大事にしてやる」相変わらずの俺様で上から目線の呟きを零すと、ケイロはゆっくりと俺にの
「最初は目的さえ果たし終えれば、離縁して手放そうと思っていたんだがな……太智の隣は俺が俺のままでいることができて、居心地が良くて、失いたくないと思うようになった」「ケイロ……」「今は太智を大切にしたい、愛したいと心から望んでいる……だから、唐突に指輪が消えて、冷静でいられなくなった」さらりと告白されて、俺の顔がカッと熱くなる。……そりゃあ俺も好きになっちまったから、そういう言葉を出されると嬉しい。でも、だからこそケイロの行動に腹が立った。「急な離縁に腹立てるぐらい俺と結婚し続けたかったなら、どうして俺をケイロたちの事情から遠ざけようとした? 俺を隔離して、ペットみたいに可愛がりたかったのか? ……冗談じゃない」声に出してみて、思いのほか自分の声が険しくて、内心ちょっと驚く。それだけケイロに本気なんだな、俺……と自覚しながら、ケイロを見据える。「俺は精霊と意思の疎通ができるけど、それだけだ。ケイロが動いてくれないと、輝石の問題はどうしようもできないから……ここまで来たなら徹底的に巻き込めよ、俺を」ケイロが俺の顔を真っすぐに見てくる。まだ悩んでいるのか、心なしか瞳が揺れている。しかし、すぐに視線を強く俺に定めると、空を歩いて俺に近づいてきた。「……左手を出してくれ」言われるままに左手を差し出せば、ケイロはそっと手を取り、ゆっくりとあの呪文を唱えた。「すべての精霊に告ぐ……今この瞬間の証人となり、婚華の祝福を我らが手に宿したまえ」言い終わった瞬間、消えたと思っていた精霊たちが一斉に光り、俺たちの手に集まって――一瞬、閃光が走る。そして光が消えた後に残ったのは、互いの薬指に輝く婚華の指輪だった。『大智が真にそれを望むのであれば、我ら精霊は心から祝福しよう&hel
肩をすくめて答えてから、俺は息を思いっきり吸い込んだ。「そこまで! ほら気が済んだだろ? このまま戦い続けたらお前らの望みが叶わなくなっちまうから、もう解散! 風の精霊だけ残って俺たちを浮かしてくれ」俺の声に今度は精霊たちが素直に従ってくれる。どうやら気が済んで正気に戻ってくれたらしい。龍がサァァァ……と砂が崩れ落ちるように消え、俺とケイロの体は緑がかった白い光をぼんやりとまとい、深夜の空に浮いていた。理解が追いつかず呆然とするケイロに、軽く手を上げながら笑う。「悪かったな、襲わせちまって。どうしても精霊たちのガス抜きが必要だったからさ。ケガはないか? ケイロなら絶対に耐えられるって信じてたから」「……確かに、あの程度でケガをするほど軟弱ではないが――」「事情はもう分かってんだろ? 俺のこと、つけて来たみたいだし」ケイロたちの乱入がタイミング良過ぎたもんな。俺が家を抜け出してすぐに、後をつけていたんだろう。うまく誤魔化せたと思ったのに……俺、体張った甲斐なかったな。上に乗って啼かされまくりながら頑張ったのに。エロの経験値が増えただけじゃねーか。内心頭を抱えていると、ケイロが大きく息をついた。「ああ……太智のことは、婚姻する前からずっと見張り続けていたからな。いつ尻尾を出してもいいよう、王宮内の神官たちに覗き見の魔法を使わせてお前を見張っていた……定期的に国へ戻っていたのは、その結果を確かめるためでもあった」「ってことは俺の行動、全部筒抜けだったのか?」「白状すれば、この世界へ来た時から太智を見張っていた。隣人だから動向を気にしておこうという程度だったが……俺たちのことに気づき、観察し始めたから要注意人物として、今の今まで監視してきた。マイラットの息がかかった敵か、俺たちが何かしでかさないかと見張っているのか、それを見定めるために」おもむろにケイロは左手を上げて薬指を眺める。
タッ、と軽く助走をつけながら、俺は精霊たちに向かって叫ぶ。「この場にいる精霊たちよ、龍になって俺を乗せろ。そしてケイロたちを取り囲め!」言いながら、精霊に龍って分かるのか? と心配になったが、戦いを止めない俺の声に応えて精霊たちが一斉に集まり形を成していった。多彩な光球が作り出した龍――俺に顔を向けながら、長くて巨大な体を境内を取り囲むように伸ばしていく。そして俺に目配せして、乗るように促してきた。俺は勢いをつけて龍の首へ駆け上り、颯爽とまたがる。「よし、上出来だ。さあ行くぞ!」精霊の龍は頭を起こして俺を高く上げながら、その体で作り上げた円を縮めていき、ケイロたち――巻き込まれてマイラットも一緒に――を囲っていく。さすがにこの状況は見過ごせなかったらしく、ケイロたちは戦いの手を止め、俺と龍を見上げて目を剥いていた。「何をしているんだ、太智!?」動揺して叫ぶケイロを、俺はジッと見下ろす。「人の話は聞かないし、自分の都合を勝手に押し付けるし、巻き込むだけ巻き込んで取り返しがつかない所まで追い込むし……もう愛想尽きた」「大智……」「ってか、もう我慢しなくても良くなったから、今まで溜まった鬱憤、ぶつけさせてもらうわ」俺は左手を見せつけて、婚姻が消滅した事実を突きつける。他の三人が呆然と俺を見る中、ケイロだけは痛みを覚えたように目が細まる。「……目的だった離縁を果たして、俺に復讐する気か?」「そう思うなら思えばいい。取り敢えず俺もケイロと同じく、自分のやりたいようにやらせてもらう……精霊たち、思う存分ケイロに突っ込め! あ、マイラットは悠の所へ移してくれ」了解したと応えるように龍が一瞬光を点滅させ、容赦なく実行に移す。猛スピードで顔からケイロへ迫り、鼻頭で空へと押し上げていく。すごい風圧……乗っているだけの俺でも息が苦しい。思わずたてがみらしきものにしが
俺たちの動きに気づいたアシュナムさんが、足先をこちらへ向けて走り出そうとするのが見えた。でも、「太智殿、今お助けを! ……クッ」周囲に浮かんでいる精霊たちの一部がアシュナムさんの前に飛び出し、暴風を吹かせて阻止してくる。ソーアさんも来て対抗しようと「風の精霊よ――」と呪文を唱えようとする。けれど精霊の攻撃が治まることはなかった。「魔法が使えない!? 精霊が神官の私の言うことを聞かないなんて……っ」『我は百彩の輝石……すべての精霊を従わせ、我の意思に添わせることが叶う存在。覇者の杖がなくとも、近くの精霊たちを統べることなど造作もないこと』俺の手の上で、さらっと輝石がチート発言してくる。単体でもすごいんだな……と驚いていると、輝石から小さく吹き出す声がした。『太智も我を手にしながら望みを言えば、精霊は同様に従ってくれるぞ?』「な、なんだって……?」『もっとも、今は精霊たちが太智に希望を見出し、心の底から慕っている。大智だけでも望みを口にすれば、我が命ずるよりも強い力を出すだろう』つまり俺もチート状態になったのか! でも、俺、ケイロたちともマイラットたちとも戦う気がないんだけど!?精霊が俺の言うことを聞くなら、一旦戦いを止めさせよう。どっちも傷ついて欲しくない――俺は大きく息を吸い込んだ。「みんな、ちょっと落ち着け! 戦う必要ないから! ケイロっ、一回マイラットの話を聞いてくれ! マイラットも、話せばケイロも分かってくれるから! ……あああ、風のせいで声が届かねぇっ……風の精霊、ちょっと風止めろー!」全力で訴えてみても、ケイロもマイラットも風の精霊さえも俺の声を聞いてくれない。むしろお互いに頭に血が上って、戦いがさらに激しさを増している。少なくとも精霊は俺の言うこと聞いてくれるんじゃないのかよ?困惑と焦りでオロオロしていると、輝石が『
『さあ太智よ、これで障害はなくなった。我に力を貸してはくれぬか?』あの金の輝きが薬指から消えた。俺はただの左手に戻ってしまった現実を、呆然と眺めてしまう。「ゆ、指輪が……まさか、これ、離婚成立……?」『うむ。全精霊の承諾を得て交わされる婚姻は、全精霊が認めれば破棄が叶う。本来は各地にある精霊を奉る神殿に出向き、報告する儀式を得て叶うことだが、今は太智に自由を与えることが精霊の総意……離縁しても一度その身に宿した王族の精は残り、その力は消えん。もう大智は一王族のみに縛られぬ』輝石の話を聞きながら、俺はジワジワと婚姻のしがらみから解放されたことを感じていく。強引に結婚させられて、離婚するためにケイロたちを手伝っていたのに……指輪が消えた左手が軽くてたまらない。最初は心から望んでいたこと。でも、今は胸が激しく痛んで泣きそうになっていた。『……どうした? これが望みではなかったのか? 精霊たちから、離縁のためにケイロ王子に協力していると聞いていたのだが――』「太智っ!!」鳥居から名前を呼ばれて俺は振り返る。いつになく必死な形相のケイロ。白銀の剣を持ち、気迫に溢れた姿は凛々しく、王子の肩書きに相応しいなと思ってしまう。すぐ後ろにはアシュナムさんとソーアさんを引き連れていて、真っすぐ俺に駆けつけようとしていた。だけどそんなケイロの前に、いつの間にか同様の剣を手にしたマイラットが立ちはだかる。ケイロたちが足を止め、悔しげに顔をしかめる。剣先を向けながら、マイラットは静かに告げた。「ケイロ殿下には申し訳ないが、太智様をお渡しする訳にはいきません」迷いがない。完全に腹を括った気配をヒシヒシと感じてしまう。それに対してケイロがカッと火が点いたように叫ぶ。「ふざけるな、裏切り者! 俺たちの都合に太智を巻き込むな!」
そりゃあ供給よりも需要が多くなり過ぎたら資源はなくなるよなあ。うん、社会科はあんまり得意じゃないけど理解できる。でも人を探しに来たって、まさかこっちの人間をあっちの世界へ連れていく気なのか? ってことは、まさか悠を――。こっちの人間で精霊が見えて、マイラットと懇意の仲。条件が揃いすぎている。慌てて悠に振り向けば、なぜか俺と同じような勢いで悠がこっちを見てきた。「秋斗さん、まさか太智を……っ!?」……え? 俺?ってか悠、舞野先生を下の名前で呼んでたのか。ここで自分が候補に挙げられると思わなくて、俺はしきりに目を瞬かせる。いやいや、俺は違うだろ。一応ケイロたち側の人間なんだし……と心の中で首を横に振っていると、「太智君……いや、太智様」「さ、様……っ!? 待ってくれマイラット。まだ心の整理どころか、状況が理解し切れていないのに――」「これよりウォルディア王国近衛隊長マイラットは、大智様に忠誠を誓い、命を賭して守ることを誓います」おもむろにマイラットが膝をつき、俺に対して首を垂れてきた。「ええええっ!?」待て待て待てっ! 人の話を聞かずに忠誠を誓うなよ!ケイロは天上天下唯我独尊を地で行ってるから人の話を聞かないけど、マイラットも大概だ。言葉だけじゃ届かないと思って、俺は全力で首を横に振った。「いやいやいや、俺は違うって! 頭は良くないし、一応精霊は使えるけどケイロの魔力が体に入ってるからだし……そもそも、世界の命運を握っちゃうような重要なことを、安易に異世界の人間に託しちゃうのはどうかと思う!」必死に訴えていると、手の上の輝石がほのかに光りながら教えてくれる。『王族の精を受けた、というのが重要なのだ』「……っ」ストレートにそう言われると、恥ずかしくて逃げ出した
舞野先生は俺が学校に入学した頃から、既に司書室にいた。前からこっちの世界の人であることは間違いない。しかし今の舞野先生はマイラットが中にいるせいで、世界からちょっとズレてしまったらしい。だって初夏なのに茶色のロングコート着てるから。 暑くないのか……? 汗まったくかいてないし、涼しげな顔してるし、どうなってるんだ?口に出してツッコミを入れたかったけれど、マイラットの真面目な空気に気圧され、俺は唇を固く結んでこの衝動をやり過ごす。ふと、硬かったマイラットの顔が安堵に緩んだ。「君から接触を望んでくれて非常にありがたい。私の主がぜひ会いたいと望んでいたんだ」「主……?」「今ここにいらっしゃる。少し待って欲しい」言うなりマイラットはコートのポケットから何かを取り出す。 乳白色に赤い糸の縫い目――俺にとってものすごく見慣れたものだった。「や、野球のボール!?」「この中に隠れて頂いていたんだよ。この世界のものは、私の世界の力を受けにくいからね」ボールを上下に掴んでマイラットが捻れば、真っ二つに割れる。 次の瞬間、把握し切れない数の色のきらめきが現れて、思わず俺と悠は目を腕で庇っていた。目を細めてどうにかその正体を確かめると、ピンポン玉ほどの丸い石が延々と輝きを放っていた。「うわっ、まぶし……っ……宝、石か?」『会いたかったぞ、坂宮太智……我は百彩の輝石と呼ばれるもの。遥か昔に精霊王様の力を受け、数多の精霊を濃縮して作られたのだ』「石がしゃべった!」 『我は石の形をしておるだけで実は生きておる。ほら、手を出してみろ』言われるままに手を差し出せば、マイラットが百彩の輝石を載せてきた。「うわっ、なんか温かいし脈打ってる! なんだこれ!? 悠、触ってみろよ」「え……う、うん……ホントだ、不思議……」ものすごく困惑しながら悠が輝石を指でつつきながら、チラチラとマイラットをうかがう。 なんでそんなに戸惑ってんだ? と心の中で首を傾